部屋が静けさに包まれる時
隣にいる友の
心臓の音が聞こえてくることがある。
比喩でもなんでもなくて
はっきりとその音が聞こえることがある。
力強い音だなと
命の頼もしさを感じる時もあれば、
あまりにはっきり聞こえる音に
モノ言えぬ不安を感じることもある。
日常の中ではなかなか難しいけれど
自分の思考のスイッチを落としていって
意識を身体の感覚に寄せる時
その音は僕の中でも確かに鳴っている。
それは聴覚ではなくて
鼓動として伝わってくる。
胸の部位もそうだが
手のひら 耳の裏
特に手を当てなくても
そのリズムは感じ取れる。
お世話になっている人の
老いを感じる時
親しい友の病気を想う時
「どうか死なないで。」と
自分の内側からの
強い声にハッとする。
またね。と別れた友と
また会いたいと強く望む時
ああ。この感情は
自分の中の「死にたくない。」
なのだと気付かされた。